こんにちは!不動産業界で日々奮闘されている皆さん、お疲れ様です。2025年の今、業界を取り巻く環境は急速に変化しており、特に顧客管理の方法も大きく進化しています。
「顧客管理のデジタル化に興味はあるけど、どこから始めればいいの?」 「うちはエクセルで管理しているけど、そろそろ限界を感じている…」 「クラウドシステムへの移行は必要?それともエクセルで十分?」
こんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。実は、顧客管理のデジタル化には「段階」があり、それぞれの企業の現状に合わせたアプローチが重要なのです。
今回は、顧客管理DXの「段階的アプローチ」に焦点を当て、「何もない状態からの顧客管理構築」と「エクセルからクラウドへの移行」という2つのステップを詳しく解説します。自社がどの段階にいるかを把握し、次のステップに進むためのガイドとしてご活用ください。
不動産業界における顧客管理の重要性

まず、なぜ顧客管理が重要なのかおさらいしておきましょう。全米不動産協会の調査では、約9割のお客様が「また同じ不動産会社を使いたい」「知り合いに紹介したい」と思っているそうです。しかし実際には、不動産会社の売上の約16%しかリピート顧客からのものではなく、過去のお客様からの紹介は20%程度にとどまっています。
この「言っていることとやっていることの差」を埋めることができれば、高額な広告費をかけなくても、ビジネスを大きく伸ばせるチャンスがあるのです。
不動産業界は「人と人との信頼関係」が基盤となるビジネス。この大切な人間関係をしっかり管理し、ビジネスに活かすための仕組みこそが、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)なのです。
顧客管理の充実は、的確な物件提案にも直結します。以下の記事では、顧客データを活用した物件提案によって反響率を2倍に高めた方法を紹介しています。顧客情報をしっかり管理することで、よりパーソナライズされた提案が可能になります。
顧客管理DXの段階的アプローチ

顧客管理のデジタル化は、一足飛びに最先端システムを導入するのではなく、段階を踏んで進めるのが効果的です。では、その段階を見ていきましょう。
【初級編】エクセルで始める!誰でもできるCRM構築法
何も顧客管理の仕組みがない、または手書きのメモやバラバラのファイルで管理している段階から始める方法です。
1. まずは目標を決めよう
「何のためにCRMを作るの?」という目的を明確にしましょう。
- 新規のお問い合わせを逃さないようにしたい?
- 既存のお客様ともっと良い関係を築きたい?
- どのお客様がどの段階にいるのか把握したい?
例えば、「既存顧客からの紹介率を現在の15%から30%に上げたい」という具体的な目標があると、必要な情報も見えてきますよね。
2. シンプルなエクセルシートを作ろう
複雑にしすぎると続かないので、まずはシンプルに!
- お客様情報シート:基本的な連絡先情報を記録
- 対応履歴シート:いつ、どんな内容で連絡したかを記録
- 案件管理シート:現在進行中の案件の状況を把握
- フォローアップシート:次にいつ、何のために連絡するかを管理
「最初から完璧にしなきゃ」と思わなくて大丈夫。使いながら少しずつ改良していけばいいんです。
3. どんな情報を記録する?
基本的には以下のような情報があると便利です:
- お客様ID(自動採番でOK)
- 氏名(ふりがなもあると便利)
- 連絡先(電話、メール、住所)
- 家族構成(子どもの年齢など将来のニーズ予測に役立ちます)
- 前回の接触日と内容
- 次回アクション予定日と内容
- 現在の状況(新規問合せ、内見済み、契約済みなど)
- 紹介者(誰から紹介されたか)
- メモ欄(趣味や好みなど、会話の中で得た情報)
不動産営業の佐藤さん(仮名)は「お客様の好きな飲み物を記録しておいて、内見の時に用意しておくだけで、すごく喜ばれるんですよ」と教えてくれました。こういった小さな気配りが大きな信頼につながります。
4. エクセルの便利機能を活用しよう
エクセルには、データ管理を楽にする機能がたくさんあります。
- フィルター機能:「今月中に連絡すべきお客様」だけを表示するなど
- 条件付き書式:「次回連絡予定日が今週」のセルを赤く表示するなど
- VLOOKUP関数:別シートの情報を自動で引っ張ってくる
- ピボットテーブル:「紹介元別の成約率」などを簡単に集計
「関数なんて難しそう…」と思うかもしれませんが、YouTubeで「エクセル 関数 基本」などと検索すれば、分かりやすい解説動画がたくさん出てきますよ。少しずつ覚えていきましょう。
エクセルCRMの成功事例
神奈川県の中小不動産会社A社では、エクセルで簡易CRMを構築し、以下の取り組みを行いました:
- お客様を「新規」「成約済み」「リピーター」「紹介者」の4つに分類
- 成約後3ヶ月、6ヶ月、1年と定期的に連絡するスケジュールを設定
- お客様の誕生日や住宅ローンの借り換え時期などをCRMに記録し、適切なタイミングでアドバイスを提供
- 地域の祭りやイベント情報を定期的にメールで配信
その結果、わずか1年で:
- リピート率が12%から28%に上昇
- 紹介による新規顧客が全体の15%から42%に増加
- 広告費を30%削減しても売上は15%アップ
「最初は面倒くさいと思っていたCRMですが、今では毎日の業務に欠かせません。特に嬉しいのは、お客様から『いつも気にかけてくれてありがとう』と言われることです」と同社の営業部長は語っています。
顧客情報のデジタル化と併せて進めたいのが、紙書類のデジタル化です。以下の記事では、紙書類のデジタル化によって印刷費を85%削減した方法を紹介しています。顧客管理とともに契約書などの書類もデジタル化することで、より効率的な業務環境を実現できるでしょう。
【中級編】エクセル管理の限界を感じたら:クラウドへの移行ステップ

エクセルでの顧客管理を一定期間続けていくと、データ量の増加や複数人での共有など、様々な課題が生じてきます。以下のような状況になったら、クラウドへの移行を検討するタイミングかもしれません。
エクセル管理の限界サイン
- データ量の増加によるファイルの重さ:開くのに時間がかかる、操作が遅い
- 共有の難しさ:「最新版はどれ?」という混乱が生じる
- 同時編集ができない:他の人が使っている間は待たないといけない
- 外出先からアクセスできない:オフィスにいないと情報を見られない
- セキュリティの不安:PCの故障でデータが消失するリスク
- 複雑な分析ができない:高度なデータ分析が困難
アットホーム株式会社では、Excelシートのマスタ更新などのメンテナンスに手間がかかり、提出されたExcelシートの集計に1人が付きっきりでも2~3営業日かかっていました。準備・集計作業を合わせると、毎月10営業日もの時間がかかっていたそうです。
エクセルの限界は顧客管理だけでなく、物件情報の管理にも現れます。以下の記事では、物件情報の更新作業を大幅に効率化する方法を紹介しています。顧客情報と物件情報、両方のデータ管理を最適化することで、業務全体の効率向上が期待できます。
クラウド移行のメリット
クラウドサービスへの移行には以下のようなメリットがあります:
- 入力・活用・維持の効率化:データ入力や更新が簡単になり、業務効率が向上します
- データ増加にも対応:データ量が増えても快適に操作できます
- 変更履歴の明確化:誰がいつどのような変更を行ったか明確に記録されます
- 共有や容量制限の緩和:複数人での同時編集が可能で、容量の心配も少なくなります
- データ破損リスクの軽減:クラウド上でのバックアップにより、データ損失のリスクが減少します
- 社外からのアクセス:インターネット環境があればどこからでもアクセス可能になります
三井不動産ビルマネジメント株式会社では、Excelデータを加工するレポーティング業務を効率化するためにクラウドサービスを導入し、レポート作成時間の大幅短縮を実現しました。これにより、データ分析結果に基づく事業戦略の立案など、より重要な業務に時間を割けるようになりました。
クラウドCRMの導入は、顧客との信頼関係構築にも活用できます。以下の記事では、デジタルツールを活用して顧客からの信頼度を90%まで高めた方法を紹介しています。
クラウドへの移行手順
STEP1: 目的の明確化と現状分析
クラウド化の第一歩は、目的を明確にし、現状の課題を洗い出すことです:
- クラウド化させる目的を明確にする
- 例:「営業担当者間での顧客情報共有を円滑にしたい」
- 例:「外出先からも顧客データにアクセスしたい」
- 現在の課題を洗い出す
- 既存のエクセル管理でどんな問題が生じているか
- 現在の稼働状況を確認する
STEP2: 適切なクラウドサービスの選定
自社のニーズに合ったクラウドサービスを選ぶことが重要です。選定ポイントとしては:
- エクセルからの移行のしやすさをチェック
- データインポートに対応しているファイル形式
- ファイルの行数などの制限を確認
特に、不動産業界では顧客情報だけでなく、物件情報や契約情報なども管理する必要があるため、業界特化型のCRMも検討するとよいでしょう。
STEP3: データの準備と移行計画の作成
エクセルデータをクラウドに移行する前に、以下の準備が必要です:
- 移行対象のシステムやデータの準備
- どのシステムを・いつまでに・どの範囲でクラウド移行させるか決める
- 移行させるシステムの順番を決める
- 移行計画を作成する
多くのCRMツールでは、CSVファイルの形式に合わせて顧客情報を加工すれば、一括で顧客情報を取り込むことができます。
STEP4: テスト移行と検証
実際の移行前に、テスト環境でデータ移行を試してみることが重要です:
- 移行のリハーサルを行う
- データの整合性を確認する
- ユーザーによる操作テストを実施する
テスト移行で問題がなければ、本番環境への移行を進めましょう。
STEP5: 本番移行と運用体制の確立
最終的な移行と運用体制の確立を行います:
- クラウドに移行する
- 効果を検証および改善する
- 移行後の検証と運用体制の確立
日鉄興和不動産株式会社では、8カ月でITインフラを刷新し、リモートワークへのシフトを実現しました。2019年7月から着手したITインフラの再構築をわずか8カ月で完了させ、リモートワークに対応するための万全の体制を整備しています。
クラウド移行の成功事例
ある不動産会社では、エクセルでの顧客管理からクラウドCRMへの移行により、以下のような成果を上げました:
- 情報共有の円滑化:営業担当者間での顧客情報の共有がリアルタイムで可能になり、チームでの対応力が向上
- 商談準備時間の短縮:必要な顧客情報や物件情報にすぐにアクセスできるようになり、商談準備時間が従来の1/3に短縮
- 顧客満足度の向上:顧客の好みや過去の対応履歴を即座に確認できるため、一貫性のある質の高い対応が可能に
- 成約率の向上:顧客ニーズに合った提案ができるようになり、成約率が20%向上
クラウド移行を含むDX推進では、全体的な計画が重要です。以下の記事では、システム導入の失敗事例から学ぶ教訓と成功するための全体計画の立て方を解説しています。CRMだけでなく、他の業務システムも含めた統合的なデジタル戦略を検討することで、より大きな効果が期待できます。
各段階での顧客活用・リピート戦略

顧客管理システムは導入するだけでは意味がありません。それをどう活用して顧客との関係を深め、リピートや紹介につなげるかが重要です。ここでは、エクセルでもクラウドでも活用できる戦略をご紹介します。
1. お客様を”分類”して効率アップ!
全てのお客様に同じ対応をするのではなく、特性に合わせて分類(セグメント化)すると効率的です。
- 取引履歴で分類:初めての購入者、複数回購入者、投資目的など
- 関心度で分類:すぐに購入検討中、半年以内に検討中、情報収集中など
- 紹介可能性で分類:とても満足している顧客、複数回取引のある顧客など
例えば、過去に投資物件を購入したお客様には「最新の投資用物件情報」を、ファミリー向け物件を購入したお客様には「学区情報や地域イベント情報」を送るなど、関心に合わせた情報提供ができますね。
2. 「忘れない」仕組みでフォローアップ
人間は忘れる生き物です。でも、CRMを使えば大切な連絡を忘れません。
- 購入記念日:「ご購入から1周年ですね。何か困ったことはありませんか?」
- 季節の挨拶:暑中見舞いや年末のご挨拶など
- ライフイベント:「お子さんが小学校入学の時期ですね。通学路の安全情報をお送りします」
- メンテナンス時期:「そろそろエアコンのクリーニングの時期ですが、信頼できる業者をご紹介しましょうか?」
大阪の不動産会社で働く山田さん(仮名)は「お客様の引っ越し日から3ヶ月後に必ず電話をかけるようにしています。その時期はだいたい不具合が出る時期なので、『何か困ったことはありませんか?』と聞くと、とても喜ばれますし、小さな問題もすぐに解決できるので、お客様の満足度がグンと上がります」と話していました。
3. 「あなただけ」感を出すパーソナライズ術
CRMに蓄積された情報を活用して、お客様一人ひとりに合わせたコミュニケーションを心がけましょう。
- 興味・関心に合わせた情報提供:「前回、庭付き物件に興味があるとおっしゃっていたので、新着情報をお送りします」
- 家族構成に合わせた提案:「お子さんの成長に合わせて、将来的な間取り変更のご相談も承っています」
- 趣味に合わせた話題:「先日お話していたゴルフ場の近くに、良い物件が出ましたよ」
4. 紹介が自然と生まれる仕組み作り
「紹介してください」と言うだけでは、なかなか紹介は増えません。紹介したくなる仕組みを作りましょう。
- 感謝の気持ちを形に:紹介してくれたお客様には、心のこもったお礼状と小さなギフトを送りましょう
- 紹介特典の設定:具体的な特典があると紹介のモチベーションが上がります
- メールの最後に一言:定期的に送るニュースレターなどの最後に「このメールが役立ったと思われたら、同じようにお悩みの方にぜひご紹介ください」と一言添えるだけでも効果的です
東京の中小不動産会社の例では、成約したお客様に「ご近所の方や職場の方で、住み替えをお考えの方がいらっしゃったら、ぜひご紹介ください。責任を持ってサポートさせていただきます」というカードを3枚渡すようにしたところ、紹介率が15%から45%に上昇したそうです。
顧客からの紹介に加えて、SNSを活用した新規顧客獲得も効果的です。以下の記事では、Instagramを活用して広告費を半減させながら集客に成功した事例を紹介しています。既存顧客のリピート・紹介戦略とSNS集客を組み合わせることで、バランスの取れた顧客獲得が可能になります。
顧客管理の次のステップは?

2025年現在、不動産業界の顧客管理は更に進化しています。エクセルからクラウドへの移行の次に来るのは、AI・ビッグデータの活用です。
AIとビッグデータの活用
AIとビッグデータの活用が不動産業界に大きな変革をもたらしています:
- 価格予測モデル:AIを活用した不動産価格の査定や予測が高度化し、より正確な価格設定が可能に
- 顧客ニーズの分析:ビッグデータ分析により、顧客の嗜好や行動パターンを詳細に把握し、個々のニーズに合わせた物件提案が可能に
- 市場動向の予測:AIによる市場分析により、将来の不動産市場の動向をより正確に予測でき、投資判断や開発計画の策定に大きく貢献
クラウド化された顧客情報は、このようなAI分析の貴重な基礎データとなります。単なる顧客管理の枠を超えて、経営戦略の策定にも活用できるのです。
自社に合った顧客管理の進め方

顧客管理のデジタル化は、一足飛びに最先端システムを導入するのではなく、段階を踏んで進めるのが効果的です。自社の状況に合わせて、最適なステップを選びましょう。
初心者の方へ:エクセルから始めよう
何も顧客管理の仕組みがない、または手書きのメモやバラバラのファイルで管理している段階なら、まずはエクセルでの基本的なCRM構築から始めましょう。
- 基本的な顧客情報をエクセルにまとめる
- 定期的な連絡スケジュールを決める
- お客様との会話の中で得た情報を必ず記録する
- その情報を活かした、パーソナライズされたコミュニケーションを心がける
- 紹介のお願いを自然な形で取り入れる
中級者の方へ:クラウドへ移行しよう
エクセルでの管理の限界を感じている段階なら、クラウドCRMへの移行を検討しましょう。
- 目的を明確にし、現状の課題を洗い出す
- 自社のニーズに合ったクラウドサービスを選定する
- データ移行の準備と計画を立てる
- テスト移行と検証を行う
- 本番移行と運用体制の確立を行う
上級者の方へ:AIとデータ分析を活用しよう
クラウドCRMが定着し、次のステップを目指す段階なら、AIやデータ分析の活用を検討しましょう。
- 蓄積されたデータを分析し、傾向や法則を見つける
- AIを活用した予測モデルを導入する
- 顧客のニーズを先読みした提案を行う
- データドリブンな意思決定プロセスを確立する
まとめ:自社の段階に合わせたCRM導入・進化のロードマップ

顧客管理のデジタル化は、一気に最先端のシステムを導入するのではなく、自社の状況に合わせて段階的に進めていくことが成功の鍵です。
- まずはエクセルで基本的な顧客情報管理から始める
- エクセルの限界を感じたらクラウドへの移行を検討する
- クラウドCRMが定着したら、AIやデータ分析の活用を検討する
どの段階においても、単に「システムを導入する」だけでなく、それをどう活用して顧客との関係を深め、リピートや紹介につなげるかという「活用戦略」が重要です。
顧客管理のデジタル化は、不動産業界の将来において重要な差別化要因となります。以下の記事では、今後5年間で不動産業界がどのように変化し、デジタル対応の有無が企業の明暗を分けることになるのかを詳しく解説しています。
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