不動産業界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をよく耳にするようになりましたね。「うちも何かしなきゃ…」と思いつつも、「何から始めればいいのか分からない」「高額な投資に見合う効果が出るのか不安」と躊躇している経営者や担当者の方も多いのではないでしょうか。
実は、多くの不動産会社がDX導入に失敗しています。せっかく高額なシステムを導入したのに、現場では使いこなせず、結局元の紙やエクセル管理に戻ってしまうケースが少なくありません。
そこで今回は、失敗事例から学ぶ「成功するDX導入の正しい順番」と、社員全員が前向きに取り組める「現場の巻き込み方」について、具体的にご紹介します。
この記事を読むと…
- なぜ多くの不動産会社がDX導入に失敗しているのかが分かります
- 高額システムを導入する前にやるべき「正しい準備」が分かります
- 社員の協力を得るための「現場の巻き込み方」のコツが分かります
- 小さく始めて大きな成果を出す「段階的なDX導入法」が分かります
不動産業界で多発するDX導入の失敗事例

「使われないシステム」に320万円を投資した不動産会社の教訓
首都圏の中堅不動産会社A社では、営業効率化を目的にCRMシステムを導入しました。導入コストは、月額12万円×12カ月+初期費用180万円で、合計約320万円。
しかし、導入から1年後の調査で衝撃の事実が判明しました。システムの実際の活用率はわずか23%。投資対効果(ROI)はマイナスという結果に終わってしまったのです。
「なぜこんなことになったのか?」
調査の結果、現場の営業担当者たちからは次のような不満の声が上がっていました。
- 「入力項目が多すぎて時間がかかる」
- 「従来のやり方の方が効率的」
- 「システムの使い方が分からない」
A社の失敗原因は明確でした。現場の業務フローやニーズを十分に理解せずに、経営層の理想だけでシステムを選定してしまったのです。
不動産業界でDX導入が失敗する主な理由
不動産業界でDX導入が失敗する主な原因として、次のような点が挙げられます:
1. トップダウンでの強引な導入
「会社の方針だから」と現場の声を聞かずに経営層だけの判断でシステムを導入すると、現場のモチベーションは下がります。特に不動産業界では、「社歴が長いベテラン社員も多く、今まで行われていたやり方や風習がある」という特性があり、一方的な変更はむしろ反発を招きます。
2. 目的が不明確なまま「とりあえずDX」
「他社がやっているから」「時代の流れだから」という理由だけでDXに取り組むと、何を目指しているのかが不明確になります。具体的な課題やゴールが見えないまま導入しても、効果を実感できず、長続きしません。
3. 現場の教育・サポート不足
新しいシステムを導入しても、使い方や活用法を十分に教育しなければ、社員は「面倒くさい」「分からない」と感じて、旧来のやり方に戻ってしまいます。特にITリテラシーに差がある不動産業界では、手厚い教育とサポートが不可欠です。
4. 一度に大きな変革を求めすぎる
全ての業務プロセスを一気にデジタル化しようとすると、変化に対する抵抗や混乱が大きくなります。特に不動産業では、対面でのコミュニケーションや紙の書類を重視する文化が根強いため、急激な変革は受け入れられにくいのです。
成功するDX導入の正しい3ステップ

では、不動産会社がDXを成功させるためには、どのような順番で進めればよいのでしょうか?ここでは、実践的な3つのステップをご紹介します。
ステップ1:現状把握と課題の明確化
多くの会社が見落としがちなのが、このステップです。「システム選び」の前に、まず自社の現状を客観的に分析しましょう。
現状把握のためのポイント
- 業務フローの可視化:現在の業務の流れを図式化し、どこに無駄や非効率があるかを特定します。 例)物件情報の入力作業が重複している、書類の承認フローに時間がかかっている、など
- 現場の声を集める:実際に業務を行っている社員からの意見を丁寧に聞き取ります。 例)「この作業が一番時間がかかる」「お客様をお待たせしてしまう場面はここ」など
- 数値データの収集:可能な限り、客観的なデータを集めます。 例)問い合わせから成約までの平均日数、書類作成にかかる時間、ミスの発生頻度など
成功事例
関西の不動産会社B社では、DXコンサルタントを招いて「業務可視化ワークショップ」を実施。全社員が参加し、付箋を使って業務フローを可視化しました。その結果、「物件情報入力の重複」「契約書作成の手間」「顧客情報の管理方法」という3つの主要課題が明確になりました。
この課題を基に、B社は優先順位をつけて段階的にDXを進め、1年後には業務効率が32%向上、成約率が15%アップという成果を出しています。
ステップ2:明確な目標設定とロードマップ作成
現状分析で浮かび上がった課題を基に、具体的な目標を設定し、実現するためのロードマップを作成します。
効果的な目標設定のポイント
- 具体的で測定可能な目標を設定する ✖ 「業務効率を上げる」「顧客満足度を向上させる」 ◯ 「契約書作成時間を50%削減する」「問い合わせ対応時間を30%短縮する」
- 短期・中期・長期の目標を分ける 短期(3ヶ月):物件情報入力の一元化を実現 中期(6ヶ月):契約書類の電子化率80%を達成 長期(1年):顧客対応時間を40%削減
- 投資対効果(ROI)を試算する 導入コスト:初期費用+月額費用+教育コスト 想定される効果:人件費削減額+売上増加額+顧客満足度向上による紹介増
成功事例
東海地方の不動産会社C社では、「契約書関連業務の時間を50%削減する」という明確な目標を掲げました。そして、3ヶ月ごとの中間目標を設定し、社内で進捗を可視化。結果として、1年後には目標を上回る63%の時間削減に成功し、浮いた時間を営業活動に回すことで売上が22%向上しました。
ステップ3:小さく始めて段階的に拡大
一度に全てを変えようとするのではなく、小さな成功体験を積み重ねていくアプローチが効果的です。
段階的導入のポイント
- 最も効果が出やすい部分から着手する 例)紙の書類が多い契約業務、同じデータを何度も入力している物件情報管理など
- パイロット部署や少人数チームで試験的に導入する 全社導入の前に、ITリテラシーが高い社員や意欲的なチームで試験運用し、課題を洗い出します。
- 成功事例を社内で共有し、横展開する 小さな成功体験を社内で共有し、「自分たちもできそう」という前向きな雰囲気を作ります。
成功事例
九州の不動産会社D社では、まず物件写真管理のクラウド化から始めました。写真撮影が多い賃貸部門の3名で試験導入し、「現場での写真整理時間が1物件あたり15分短縮」という具体的な成果を出しました。この成功体験を社内で共有したことで、他のデジタル化にも前向きな雰囲気が生まれ、2年後には全社のペーパーレス化に成功しています。
社員全員が前向きに取り組む「現場の巻き込み方」

いくら優れたシステムを導入しても、現場の社員が活用しなければ意味がありません。ここでは、社員の協力を得るための具体的な方法をご紹介します。
1. 「何のため」を共有する
単に「新しいシステムを導入します」と伝えるのではなく、「なぜそれが必要なのか」「どんな課題を解決するのか」を丁寧に説明します。
効果的な伝え方
- 現場の不満や課題と紐づけて説明する 「皆さんから『物件情報の入力が大変』という声があったので、この部分を改善するシステムを導入します」
- 具体的なメリットを示す 「このシステムを使うことで、1日あたり約1時間の事務作業が削減できます。その時間を接客や営業活動に使えるようになります」
2. 「デジタルチャンピオン」を育てる
社内で影響力のある社員や、ITに詳しい社員を「デジタルチャンピオン」として任命し、現場と経営層をつなぐ橋渡し役にします。
デジタルチャンピオンの役割
- システムの先行利用者として意見やフィードバックを提供
- 周囲の社員への使い方のレクチャーや相談対応
- 改善アイデアの収集と提案
成功事例
東京の不動産会社E社では、各支店から1名ずつ「DXリーダー」を選出。週1回のオンラインミーティングで進捗や課題を共有し、現場の声を反映したシステム改善を行いました。結果として、導入半年後のシステム利用率は92%という高水準を達成しています。
3. 十分な教育と継続的なサポート
新しいシステムの導入時には、丁寧な教育と継続的なサポートが不可欠です。
効果的な教育・サポート方法
- 段階的なトレーニングプログラムの実施 基本操作→実践的な活用法→応用テクニックと段階を踏んで教育
- マニュアルやFAQの整備 文字だけでなく、スクリーンショットや動画を活用した分かりやすい資料
- 「DXバディ制度」の導入 デジタルに強い社員と苦手な社員をペアにして相互学習を促進
成功事例
関東の不動産会社F社では、新システム導入時に「3ヶ月サポート体制」を構築。最初の1ヶ月は週2回のオンライン質問会、次の2ヶ月は週1回のフォローアップ研修を実施。また、「困ったらすぐ聞ける」専用のチャットグループを作り、疑問点をリアルタイムで解決できる環境を整えました。
4. 小さな成功を祝い、共有する
DX推進の過程で生まれた小さな成功事例を積極的に共有し、全社的なモチベーション向上につなげます。
効果的な共有方法
- 社内報やイントラネットでの定期的な事例紹介 「○○さんのチームでは、このシステムを活用して△△という成果が出ました」
- 成功事例発表会の開催 月1回のランチミーティングで、各部署の成功事例や工夫を共有
- 「DX貢献賞」の設立 デジタル化に積極的に取り組み、成果を出した社員やチームを表彰
中小不動産会社でも実践できる「コスト抑制」のポイント

「DXは大手企業のもの」と思っていませんか?実は、中小規模の不動産会社でも、予算を抑えながら効果的にDXを進める方法があります。
1. 無料・低コストのツールから始める
必ずしも高額な専用システムから始める必要はありません。無料や低コストのクラウドサービスを活用する方法もあります。
おすすめの無料・低コストツール
- Google WorkspaceやMicrosoft 365 クラウドストレージ、共同編集可能な文書、スプレッドシートなど基本的な業務効率化ツールが揃っている
- Trello、Asanaなどのタスク管理ツール 物件の進捗管理や業務の見える化に活用できる
- Slack、Chatworkなどのコミュニケーションツール 社内連絡や情報共有の効率化に役立つ
2. 助成金・補助金を活用する
中小企業向けのIT導入補助金や各種助成金を活用することで、初期投資を抑えることができます。
主な助成金・補助金
- IT導入補助金 中小企業のIT導入を支援する国の補助金制度。導入費用の最大3/4(上限450万円)が補助される
- 事業再構築補助金 ビジネスモデルの転換やDXを伴う新たな取り組みに活用可能
- 各都道府県・市区町村の独自助成金 地域によっては独自のDX支援制度を設けているケースもある
3. 段階的な投資計画を立てる
全てを一度に導入するのではなく、優先順位をつけて段階的に投資していくことで、資金負担を分散させることができます。
段階的投資のポイント
- 第1段階(3ヶ月目標):無料・低コストツールで基本的な業務効率化
- 第2段階(6ヶ月目標):最も効果が高い業務に特化したシステム導入
- 第3段階(1年目標):他システムとの連携や機能拡張
成功事例
北陸の中小不動産会社G社では、まず無料のGoogleスプレッドシートで物件情報を一元管理することから始めました。その後、IT導入補助金を活用して顧客管理システムを導入し、最終的には物件管理システムと連携させるという3段階の投資計画を実行。総投資額を当初予算の60%に抑えながら、全社的なDXを実現しています。
まとめ:DX成功のための3つのポイント

不動産業界でDXを成功させるためには、以下の3つのポイントを押さえることが重要です:
- 小さく始めて成功体験を積み重ねる 高額なシステム一式を導入する前に、小規模なデジタル化から始めて効果を実感しましょう。
- 現場主導で進める 経営層だけでなく、実際に業務を行う現場社員の声を活かしたDX推進が成功への鍵です。
- 明確な目的と評価基準を持つ 「なぜDXに取り組むのか」「成功とは何か」を明確にし、定期的に効果を測定しましょう。
DXは単なるデジタルツールの導入ではなく、ビジネスモデルや組織文化の変革を伴う取り組みです。「テクノロジーの選択よりも、人と組織の変革にかかっている」ということを忘れずに、計画的かつ段階的に進めていくことで、中小不動産会社でも確実に成果を出すことができます。
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